A Poem Not Against Songbirds

ソングバードに文句を言うのではないけど

2013 いまさら上半期

 

 

 

 

1 Riverside "Shrine of New Generation Slaves" 

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 ポーランド出身プログレメタルバンドの5thアルバム。King Crimsonを彷彿とさせる暗黒性とメタルに寄り過ぎない絶妙なバランス感覚をもって独自のプログレッシブ・ロックを作っていたRiverside。初期三部作を経てリリースされた前作では大胆にもメタル要素を大幅に増強し都会的なアレンジによるモダンな感性をうまく落とし込んだ名盤だった。対して本作、まず特徴的なのが前作のそれともそれ以前のとも違う「70年代」の空気である。ときにブルージーにときにハードロック然として鳴らされるリフ、ユニゾンしたりリードしたりと動きまわる輪郭太いベース。これらが自信たっぷりの構成と、確信を持って空間を埋める音の粒によって、圧倒的なRiverside節を生み出している。開幕を飾る完璧なオープニングトラックの"New Generation Slave"から、ブルージーなリフで攻めるシングルカット"Celebrity Touch"、Rushライクなポップセンスの光る"Feel Like Falling"といったトラックでは前作で培ったモダンなアレンジが現代のバンドらしいソリッドな側面を見せる一方で、"The Depth Of Self - Delusion""Deprived (Irretrievably Lost Imagination)""Escalator Shrine"といったトラックではPink Floydもかくやという叙情的でアトモスフェリックなサウンドと緩急のきいた展開でプログレッシブな感性が爆発する。プログレッシブとプログレメタルを、そして過去のRiversideと現在のRiversideをつなぐ傑作アルバム。文句なし、十年に一度の名盤。

 

 

2 Steven Wilson "The Raven That Refused To Sing [And Other Stories]" 

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 英プログレロックシーンを代表するコンポーザーSteven Wilsonのソロプロジェクト、通算3枚目のフルアルバム。Porcupine Treeという現代的な感性をもったプログレッシブバンドを主催する一方で、数々のサイドプロジェクトやプロデュース・マスタリング業もこなすワーカホリックなSW。このソロプロジェクトではバンドをさらに発展させた繊細でプログレ然とした音楽性を特徴としていたが、ライヴDVDもリリースしたソロバンド体勢でのツアーをもってメンバーを一新、マルコ・ミネマンなどの名手を加えてその熱気を詰め込んだ結果出来上がったのが本作となる。その内容はといえばともすれば「あざとい」(しかし彼の特徴でもある)といえるプログレッシブ・ロック(特にKing Crimson,Yes,Pink Floyd)の美味しいところを見事に現代流に昇華したスティーブン・ウィルソンワールドで、どこを切っても魅力的なパートしか存在しないと言い切れる濃密な6曲が並ぶ。中でもツアーでも先行披露された"Luminol"が特にすばらしく、跳ねまわるベースラインと優雅なフルートが特徴であるスリリングなスピードパートと、ピアノとコーラスワークが冴える静寂パートの対比があまりに美しいプログレソングである。こちらも文句なしの名盤。

 

 

3 Leprous "Coal" 

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 ノルウェー産、Ihshanのバックバンドも務めるプログレッシブ/ブラックメタルバンドの4th。アバンギャルドとプログレッシブの狭間を、シアトリカルな構成と北欧らしい冷たい叙情性で攻めるLeprous。かのイェンス・ボグレンをミックスに迎えた本作では彼らの持ち味である緩急の効いたサウンドがさらに深化しており、"Chronic""Coal"などに顕著なともすればDjentとも言えるヘヴィでソリッドな刻み(デヴィン・タウンゼンド風)に朗々としたヴォーカルが響き渡る圧倒的な世界観。特に"The Valley"の70sプログレを彷彿とさせる霧がかった空間にゴリゴリとしたリフが姿を変えながら侵食して、いつの間にか全く別物に変質しているかのような構成は見事。アバンギャルドではあるのだが極めて(北欧的には)ストレートなプログレッシブ・メタル。

 

4 Cult Of Luna "Vertikal" 

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 スウェーデン出身ポストメタルバンドの5年ぶりとなる6枚目のフルアルバム。ポストメタルに分類されがちだが音楽的にはプログレッシブの範疇で、ブラックとはまた別種な暗黒性とモダンなリフワークが特徴。本作はSF映画をコンセプトとしたアルバムで、電子音やインダストリアル的なアレンジを取り入れつつも全体としては強固にまとまった知的なメタルアルバムとしての印象を受ける。"I: The Weapon""Vicarious Redemption"という前半の2曲の完成度が恐ろしく高く、ラストを美しく陰鬱に締める"Passing Through"まで素晴らしい出来上がり。音の一つ一つには狂しいエモーショナルさが溢れているのに、曲としてまとまったときに知的ささえ感じる作曲能力に脱帽だ。

 

 

5 Bruce Soord With Jonas Renkse "Wisdom of Crowds"

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 スウェーデンを代表するドゥーム・ゴシックバンドKATATONIAのフロントマンであるヨナス・レンクスと、UK出身のポストロックバンドThe Pineapple Thiefのフロントマンブルース・ソードとによるプロジェクト。基本的にはThe Pineapple Thiefの音楽性の延長線上にあり、電子音をとりいれたnextプログレッシブなロックが主体である。そこにヨナスの深みのある美しい声が乗ることにより、独特の浮遊感を生み出すことに成功している。反復基調のリフワークやシンセパッド、アコースティックギターとブルージーで粗を研がれたソロの音色、どれもが必要不可欠な説得力を持って共存しており、"Wisdom Of Crowds""Frozen North"などといった曲ではまさにKatatonia+The Pineapple Thiefな叙情性が展開される。

 

6 あさき "天庭" 

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 Konamiのコンポーザーでもある"あさき"による国産和風V系アバンギャルプログレッシブメタルプロジェクトの2nd。前作"神曲"が公式通販限定という手に入りにくさながらその完成度の高さからネット内のメタラーを中心にひっそりと話題になっていたが、今作(同時並行で制作された1stのリマスタも含め)より一般流通になり手に入れやすくなった。前作ではプログレッシブメタル直系のサウンドにV系風アレンジと和風テイストを加えたある種シンプルな曲が並んでいたが、今作ではコンセプトアルバム風味となり全体として大曲志向で、Dir en grey風なカオティックやアバンギャルドな展開、人をくったようなアレンジも多く聴ける。意味ありげなストーリーコンセプトが見え隠れするもののどこか胡散臭く、そういう点も含めてよく完成された混沌と言えるだろう。クオリティとしては非の打ち所がない。

 

7 Atoms For Peace "Amok" 

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 Radioheadのフロントマンであるトム・ヨークと、そのプロデューサーでありミュージシャンでもあるナイジェル・ゴドリッチを中心に、Red Hot Chili Peppersのフリーなどを加えて結成されたバンドの1stフルアルバム。近年電子音楽への傾倒が著しかったトム・ヨークがついに本格的にジャンルを踏み越えた、といった感じの楽曲が並んでおり、アルバムリリースに合わせてDJとしてのパフォーマンスも行っている。トム・ヨークの空間的なヴォーカルはダンスミュージックでサンプリングされたヴォーカルラインのような楽器性を持ちつつも"トム・ヨークの声である"という一点でロックにギリギリ踏みとどまっても聴こえ、フリーの主張強いベースやエレキギターの音色も含めボーダレスな印象を与える。一方で電子音を使ったパートではこれも付け焼き刃ではない本格的なエレクトロニカで、非常に面白いアルバムになっている。

 

 

このへんであきた

 

8 Tesseract "Altered State" 

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 UK産Djentバンドの2ndフルアルバム。はやくも形骸化しはじめたDjentシーンにおいて生きたリフを刻める数少ないバンド。爽やかなクリーンオンリーのヴォーカルも全体の印象を知的にまとめることに成功している。

 

9 Armin van Buuren "Intense" 

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ダッチトランスを代表するDJによるオリジナルとしては6枚目にあたるアルバム。オーケストラの音を取り入れたアンセム感漂うタイトル曲から、キャッチーでありながらシンプルな"This Is What It Feels Like"で美しく繋ぐ3曲目"Beautiful Life"が大名曲。他の曲も名曲揃いの傑作。

 

10 Dark Tranquillity "Construct" 

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 スウェーデン出身メロデスシーンを代表するバンドによる10th。開き直ったダートラがKatatoniaやParadise Lostといったドゥーム/ゴシック系の慟哭にメロデスの叙情リフを加えモダンなアレンジを加えてイェンス・ボグレンを混ぜた結果→すごいものができました。といった感じです。

 

 

その他、寡作アルバム。

凛として時雨 "I'm Perfect" 

 TKソロの反動かコンパクトでシンプルに。しかしそのせいか時雨の持ち味がよく出た。

小林太郎 "Tremoro" 

 反則すれすれのキャッチーさと花開くセンス。より色鮮やかになった1stフルアルバム。

Serenity "War Of Ages" 

 ほとんど中期Kamelot+後期Dark Moor。でもクオリティは高くよくまとまってる。

Altar of Plagues "Teethed Glory and Injury" 

 理性的なキチガイブラック。解散ってマジなんですかね

The Dillinger Escape Plan "One of Us Is the Killer" 

 これぞカオティック・ハードコア。飛び抜けた名曲が欲しかったが手堅くまとまっている。

Galneryus "The Ironhearted Flag Vol. 1 Regeneration Side" 

 過去曲のセルフカバー。やっぱり小野正利って神だわ。たまにYAMABも恋しくなる。

Stratovarius "Nemesis" 

 完全に第二の全盛期をむかえた新生ストラト。あえて言うなら北欧の陰りが今回少し足りないか。

Avantasia "The Mystery Of Time" 

 新章突入。相変わらずどの曲もクオリティが非常に高い。

The Delta Saints "Death Letter Jubilee" 

 US出身の若手現代的ブルース・ロックバンド。末恐ろしい完成度。

[Champagne] Me No Do Karate 

 国産オルタナティブロック。UK色を強めたアレンジに美しいメロディーライン。

摩天楼オペラ "喝采と激情のグロリア" 

 完全に開き直ったV系シンフォニックメタル。もろRhapsodyな曲をもっと増やしていい。

The Winery Dogs "The Winery Dogs" 

 リッチー・コッツェン+ビリー・シーン+マイク・ポートノイ。長続きしてください。

DGM "Momentum" 

 ハイクオリティなプログレッシブパワーメタル。いい出来。

Children Of Bodom "Halo of Blood" 

 原点回帰というよりは順当な進化。北欧らしい叙情性が戻ってきて力強い仕上がり。

Kalmah "Seventh Swamphony" 

 いつものKalmah。アルバムタイトルが洒落が効いてていい。

Dark Moor "Ars Musica" 

 少しメタル成分は薄れ歌モノよりに。もともと素質はあったので違和感はない。

Dir en grey "The Unraveling

 Djentになってきた。過去曲のリメイクもファン視点からはGood。新譜に期待。

 

フリスビー

Bullet For My Valentine "Temper Temper" 

 BFMVは死んだんだ。