A Poem Not Against Songbirds

ソングバードに文句を言うのではないけど

ライヴレポート Muse 2013.01.11 さいたまスーパーアリーナ

Museライヴレポート

 

 最新作The 2nd Lawが思ったよりも悪い出来だったのと直後のiTunesLiveの微妙さに「そろそろMuseも下り坂なのかな」と不安はあったのですが、そこはやはり昔から大好きでいつかライヴを見たいと思っていた気持ちが勝ったので参戦。初のアリーナクラスのライヴです。

 1月11日は雪の予報もあったのですが結局そこそこの快晴。外套を着ていれば凌げる程度の寒さの中、物販に並びグッズを購入。その後クロークに荷物を預け(これが後の悲劇につながるとも知らず)、待機列でテンションを高めつつ会場へ。入場順は500番台でARブロック(ステージ向かって右。一般的にはギタリストのサイドですがmuseは左右反対なのでベーシストのクリスサイド)と、先に入場していく客の多さを見るにアリーナでも相当後ろなことを覚悟する状態だったのですが、ALサイドに客が集中したせいかあるいは前座があったせいか、図らずもかなり前方に行くことが出来ました。最終的には最前から5列目くらいまでたどり着くことに。客層は若者中心で男女比1:1くらいとロックバンドにしてはかなり珍しい感じでした。あとカップルも多かった気がします。

 入場するとすぐに前座の[Champagne]が開始。まず観客が全然いない。物販やトイレに流れているせいでしたが、5割くらいしか埋まっていなくて後のMuseが心配になる閑散具合でした。次にアリーナの音が存外いい。これは意外でした。この手の会場では音の悪さを覚悟していくものと思っていたんですが、バランスも音圧も丁度よく、嬉しい誤算に。さて[champagne]の演奏ですが、まずヴォーカルの声の伸びとリズム隊の安定感に驚きました。特にドラムが上半身全裸でチャイナが頭より高くて、見た目のインパクトも抜群。 楽曲の方は典型的な邦楽ギターロックという感じでしたが、広い会場とアウェーな空気にも負けず堂々とした演奏で、終わる頃にはYoutubeで軽く予習した時よりもいい印象に変わりました。今度アルバムを買ってみてもいいかもしれない。観客も最初は棒立ちで見ていたのですが爆笑MC(「はじめましてシャンパンです。ここで演奏できて光栄です。事前にサポートアクトが発表されたときはネット等で俺ら死ねっていう声がたくさんあったんですけど(笑いが起こる)、自分らも高校生の時にオアシスいって前座がブーイング受けているのを見たりしたので気持ちはわかります。でもこうしてみなさんに暖かく迎えてもらえて本当にうれしいです。またどこかでお会いしましょう (拍手)」)が終わり最後の曲になる頃には盛大な拍手と歓声があがり、お互いにとても気持ちのいいライヴになったと思います。

 そしてしばらくの間を経て会場が暗転。この頃には客席もかなり埋まって来ましたが、それでも7割くらいでした。翌日の公演が完売したことを考えると平日なので仕方ないかなとも思います。しばらく焦らして新譜のタイトル曲"The 2nd Law: Unsustainable"からいよいよライヴ開始。ナレーション付きのSEパートでもうテンションは十二分に高まり、ダブステップ風のバンドパートで歓声とともにいきなりアリーナ前方では激しい押し合いが。この時点では今回のライヴの特色であるピラミッド状のディスプレイ群は展開していなかったのですが、メンバーの存在感と証明だけですでにMuseの世界観が作られていました。そして流れるように新譜の1曲目である"Supremacy"。Museらしい大げさなイントロで客席の興奮は最高潮で、リフに合わせてジャンプの嵐。静かになるAメロではマシューに合わせていきなりの合唱。正直サビで歌うのは当たり前として、この時点で歌い出すとは予想外でした。さすがアリーナ最前、士気が違います。マシューの歌唱は例によって「喉からCD音源」で、素晴らしくうまい。そして爆発するサビと間奏のユニゾンソロでまた激しい押し合い。この曲は新譜でも人気が高いのか、1曲目から相当な盛り上がりだったと思います。そして続くのはライヴの定番曲"Map of the Problematique"。とはいえこの段階で演奏されるのはなかなか珍しいことだったため、観客の間でも「今日のライヴは何か違う」という予感が走ります。そして前曲にも負けない凄まじい盛り上がり。もちろん終始合唱、合唱、そして合唱。これにはメンバーもかなり楽しそうで、演奏にも熱がこもっているのを感じます。アウトロはいつものZEP風ジャム。終わるとマシューが 「コンバンハートウキョウ !」とMC。マシューさんここ埼玉です。そしてついにステージ上半分を占めていたディスプレイ群が展開、逆ピラミッド型になり否応にも期待が高まります。そして"Panic Station"が開始。ファンキーなベースリフに合わせて激しい押し合いがまた開始。ディスプレイには謎のダンスキャラが映し出されていました。かなりハイトーンになるサビでもみんな当然のごとく合唱。正直この時点では若干音のバランスが良くなかったのですが、それが気にならない盛り上がりでした。続くのは"Resistance"。イントロのピアノリフからまたもや観客のテンションは最高潮。休む暇がない。もちろんBメロ(It could be wrong, could be wrong) のコーラスとサビで大合唱。マシューもかなりテンションが高く、最後のハイトーンも笑ってしまうほど伸びやかに歌い切ります。そして発振音と共に"Supermassive Black Hole"。もうこの時点で汗だくでかなり疲労を感じていたのですが休んでいられない。サビのタイトルコールをシンガロングしたりクラウドサーファーが発生したりと客席の盛り上がりも尋常じゃなかったです。バラードの"Animals"でようやく休憩タイム。みんな静かになってスマホで写真を撮ったりしていました。静かなサビから一転激しくなる間奏のドラム連打はかなり盛り上がり、続くギターソロもなかなか聴き応えがありました。ディスプレイに写っていたのは為替市場のイメージビデオでした。これはPVになるのかな? ここでひと呼吸置いてクリスタイムの"Man with a Harmonica"。途中でハーモニカを客席に投げ入れていていました。もちろん次はライヴの定番曲にしてMuse随一のスケールを誇る大合唱曲"Knights of Cydonia"定番の流れなので観客もイントロから堰を切るように大声をあげます。そしてはじまるジャンプ&シンガロング。ハーモニカの流れのまま珍しく客を煽るようにステージの端までやってくるクリスや、楽しそうに叩くドム、そして滑り込んだまま勢いでひっくり返ったりしているマシューが印象的でした。やはりこの曲はライヴに限ります。クールダウンするかのような"Monty Jam"が終わり、ピアノが登場。新譜からバラードの"Explorers"でマシューはピアノでの弾き語りを披露。 会場全体がしっとりとした雰囲気に包まれます。曲が終わってもギターを持たず、そのままピアノを軽く弾くマシューに事前にセトリとして海外で披露されていた1stの"Sunburn"かな、と思わせておいて始まったのはまさかの"Exogenesis: Symphony, Part 3: Redemption "。これはサプライズでした。去年日本の芸人"鉄拳"の作った動画のBGMとして使われたのがきっかけで公式になったのも記憶に新しいですが、長い間ライヴで演奏されて来なかったこの曲がこのタイミングでまさか演奏されるとは。ディスプレイには件の動画が映し出され、感慨深い時間でした。会場全体がしんみりとした空気になる中、なんと始まったのは"Time is Runnning Out"。定番曲ではあるのですが前の曲までの雰囲気を完全に壊す流れに思わず失笑、でもこのアホっぽさがMuseとも言えます。静かな曲が続いた反動もあってか、もちろん大合唱。マシューがBメロで客席にマイクを向けてもばっちり歌い切ります。最近のこの曲はテンポがが原曲より遅いのでそこが若干気になったのですが、大好きな曲なので楽しくシンガロングに加わりました。その後軽くジャムりつつクリスがおもむろにマシューのいた左サイドへ移動。新譜からクリスがヴォーカルをとる"Liquid State"へ。昔からマシューに隠れているだけでコーラスで抜群の歌唱力を披露していた彼の初のメインヴォーカル曲ですが、やはりなかなかどうして堂々とした歌いっぷりでした。そして暇なマシューがドムのドラムセットまで行ったりステージ中をうろうろと動きまわっていたのが面白かったですね。クリスが一礼し、ステージにスモークが発生。鮮やかなレーザーが走り、新譜からシングルカットでヒットした"Madness"に。マシューは昨年の海外ライヴで多く披露していたディスプレイ付きのサングラスをかけ、ディスプレイと連動しているカメラに向かって嘗め回すように近づき歌います。こういうパフォーマンスは堂に入っています。もちろんここでも大合唱。バラード系ながら広がりのあるわかりやすい曲なので、ライヴでよく映えると思いました。続いてさらに新譜から"Follow Me"。ディスプレイにはジャケットにもなった脳神経細胞のようなモデルが移ります。正直この曲はシングルカットとしてはロックとしてのダイナミズムに欠けるというか、Museらしからぬ曲だなあと思っていたのですが、ライヴでは化けました。合唱も自然に発生し、既存の人気曲と変わらない盛り上がりに。曲が終わるとようやくマシューがMC。「明日会場くる人は?」などと聞いた後、"Undisclosed Desires "に。この曲ではマシューがもはやギターを下げず、ステージを降りて花道を歩き回りながら歌っていました。そしてその光景がカメラを通してディスプレイ群に映り、観客もそちらに集中してしまってなかなか面白い光景でした。サビでももちろん合唱。ようやくステージに戻ったマシューが発振音で遊んだ後、定番曲の"Plug in Baby"へ。イントロのリフからシンガロングが始まり、サビではこの日一番の合唱になりました。やはりこの曲は盛り上がります。ここまで大人しめの曲で焦らされたのもあってかアリーナでも激しい押し合いになり、非常に楽しかったです。アウトロではマシューが一瞬Gunz and rosesの"Sweet child of mine"のリフを弾いていました。その後ディスプレイにはこの日最後の曲を決めるルーレットが映し出されます。これは昨年のライヴからの定番で、実質2大人気曲である"New Born"か"Stockholm Syndrome"のどちらかを決める演出なだけですね。そしてこの日選ばれたのは私が一番好きな"Stockholm Syndrome"でした。これはもうタイトルがディスプレイに映しだされた瞬間からこの日一番の熱狂的な盛り上がりに、アリーナ前方は戦場と化しました。みな思うがままに体を動かし、手を振り上げ、大声で合唱をする。開放的なサビではシンガロングし、攻撃的な間奏では頭を降る。ピラミッド型のディスプレイはここにきて縦横無尽に稼動し、メンバーも非常に楽しそうに動きまわり、本当に楽しい時間でした。どうせなら"New Born"も聴きたかったなあとも思いましたけどね。アウトロでは恒例のRATMのFreedomを演奏。最後に上から下がってきたディスプレイがメンバーを覆い隠し、圧巻のフィナーレとなりました。そしてそのまま冷たいピアノのイントロからはじまる"The 2nd Law: Isolated System "ディスプレイに映しだされるのはPVの映像で、ライヴ導入の時とは違い観客は特に騒がず固唾を飲んで見守る感じでした。やがてディスプレイにメンバーが覆い隠されたまま"Uprising"がスタート。シルエット状に映しだされたメンバーが演奏とともに再び登場する演出が非常にかっこよかったです。もちろんこの曲もハンドクラップとシンガロングで盛り上がります。やはりライヴで映える曲です。珍しいことにこの熱狂を先導するのはクリスで、ステージ中央で頭を振りながら演奏し煽っていました。こうして本編が終了、とはいえ観客も満足できるはずがなく、アンコールを催促。かなり焦らされた後、定番のキャッチーな一曲"Starlight"。マシューは安定してテンションが高く、マイクを客席に向けて合唱を促していました。もちろん我々も大声でシンガロングし、ジャンプして拳を振り上げます。個人的にすごく思い入れのある曲だったので、このアンコールで聴けて本当によかったです。そしてピアノがステージに再び登場。ラストを飾るのは昨年のオリンピックのテーマ曲にもなった"Survival"。リリース時からライヴでは相当盛り上がるだろうな、と思ったのですが意外にも想像程ではありませんでした。これが唯一残念だったことですね。理由はここまでずっと暴れてきた観客の疲れがあった、というのもあるのですが、なによりハンドクラップとメロディーの合唱とコーラスと、どれをやるのか各々でバラバラになってしまい、思ったより統一感が出せなかったことですね。かえってシンプルな曲のほうがこの手のパフォーマンスには向いているのだなと感じました。もっとも、フィナーレに相応しく十二分に盛り上がりましたけどね。あとギターソロは盛り上がりました。マシューは最後まで声が素晴らしく出ていましたね。

 こうしてライヴは終了。汗だくのまま会場を後にしようと思ったところ、待ち受けていたのはクローク待ちの長蛇の列でした。これは本当にいただけなかったですね。結局どんどん冷えていく体のまま外に小一時間並ばされてしまいました。どうやら翌日のクロークでは改善されていたようなので、これは素直に運が悪かったと思うほかないです。

 さて、ライヴを総評して。前述したような新譜の内容の悪さと直後のライヴでのパフォーマンスの悪さで感じていたバンドへの不信感は、今回のライヴで完全に吹き飛びました。やはり彼らは変わらず世界一のライヴバンドです、それは間違いない。新譜の曲はライヴで見事に化けましたし、演奏も非常に質が高くかつ熱いものでした。全盛期のような破滅感さえ覚えるバンドとしての化学反応はさすがに薄れてしまいましたが、代わりにライヴセットを活かした大御所バンドのような素晴らしいパフォーマンスを見せられるようになったのだなと思います。彼らももう若くないわけですし、落ち着いたという意味でもこれでよかったのでしょう。もちろんかつてのような圧倒的なパワーをもう求めていないかと言われると嘘なのですが、それでもこれだけ楽しいライヴだったのでまだまだMuseは大丈夫だと思いました。むしろセットに関してはかなり気に入ったぐらいです。どうやら2日目は会場が埋まったのもあり1日目より盛り上がったようで、カメラもかなり入っていたというので何らかの形で映像化あるのでしょうか? だとしたら楽しみです。前座のバンドの良さや"Map of the Problematique ""Exogenesis: Symphony, Part 3: Redemption ""Stockholm Syndrome"を聴けたという点も含め、本当にこのライヴに行ってよかった。

 

 

セットリスト

 

[Champagne]

 

01 For Freedom

02 Rocknrolla!

03 Waitress, Waitress!

04 Cat 2 

05 starrrrrrr

 

Muse

 

01 The 2nd Law: Unsustainable 

02 Supremacy 

03 Map of the Problematique 

04 Panic Station 

05 Resistance 

06 Supermassive Black Hole 

07 Animals 

08 Knights of Cydonia (Man with a Harmonica intro)

09 Monty Jam 

10 Explorers 

11 Exogenesis: Symphony, Part 3: Redemption 

12 Time Is Running Out 

13 Liquid State 

14 Madness 

15 Follow Me 

16 Undisclosed Desires 

17 Plug In Baby 

18 Stockholm Syndrome (Rage Against the Machine's Freedom outro)

 

Encore:

19 The 2nd Law: Isolated System 

20 Uprising (Extended outro)

 

Encore 2:

21 Starlight 

22 Survival