2012年ベストアルバム
2012年の個人的ベストアルバム
※ライブアルバム、リマスター盤は除外
1.Circus Maximus "Nine"
2.Rush "Clockwork Angels"
3.The Flower Kings "Banks of Eden"
4.Between The Bruied And Me "The Parallax II"
5.Van Halen "A Different Kind of Truth"
6.John Mayer "Born And Raised"
7.Soen "Cognitive"
8.TK from 凛として時雨"flowering"
9.Enslaved "Riitiir"
10.Kamelot "Silverthorn"
すごく順位的には悩んだんですがまあよく聴いた順ということでこんな感じで。
ちなみに除外入れると余裕でLed Zeppelinでした。
各評価は下記
2012年 ロックアルバム簡易評 ベスト30
Acid Black Cherry "2012"
元Janne Da Arcヴォーカルのyasuによるソロバンドの3rd。5連続リリースシングルを経てのアルバムとなっており、確かにシングル曲はどれもキャッチーかつバラエティに富んでいて聴きやすい。が、他のアルバム曲が少々印象に残らない。とはいえどれも水準は高く、ヴィジュアル系メロディアスハードロックとしてファンの期待を裏切らない出来にはなっている。どことなくJanne Da ArcのAnother Storyを彷彿とさせるところがなくもない。
Alcest "Les Voyages de l'Âme"
フランス産、ポストブラックシューゲイザープロジェクトの3rd。繊細で儚く、暴虐的なまでに美しいサウンドは健在。Alcest節としか形容できない神秘的で郷愁溢れる曲が揃っている。方向性としては前作の延長線上で、曲によってはブラックメタル的なトレモロリフや疾走、デスヴォイスも味付けとして顔を覗かせる。雰囲気こそ変わらないものの、ややメタルとしての良くも悪くもあざとさみたいなものが出てきている気がするが、そこは個人的には高評価。唯一無二の孤高性が減少したと言えばそうなのかもしれないが、それでもこれはAlcestにしか出せない音だと思う。
Between The Bruied And Me "The Parallax II"
アメリカ出身、プログレッシブデスメタル/ハードコアバンドの6th。前ミニアルバムからコンセプトを引き継いだフルアルバムで、壮大・濃密・混沌といった言葉が似合う圧倒的なサウンドとなっている。どの曲も呆れるほど落ち着きがなく、テクニカルに刻んだかと思えばキャッチーに歌ってみたり、タッピングや変拍子で幻惑しては突然ジャジーな雰囲気になって翻弄したりと聴いていて飽きない。それでいてそれぞれ明確な個性を持っていて散漫でない、というのはもはや脱帽するしかありません。聴けば聴くほど好きになる素晴らしいアルバム。
Blessed by a Broken Heart "Feel the Power"
カナダ出身メタルコアバンドの3rd。前作における思い切った80年代の影響を強く受けた楽曲で話題を集めた彼らだが、今作では一転してストレートかつ王道なHR/HM路線となっている。どの曲も強烈なフックがあり、ともすれば商業的と揶揄されるような脳天気な空気さえ実に心地いい。貪欲なロックの楽しさの追求と考えればこの方向性も十二分にありだと思います。個人的には高く評価したい。
Byee The Round "ハローイエロー"
国産ギターロックバンドのメジャーデビューミニアルバム。キャッチーで歌謡テイストなメロディー、骨太なリズム隊と一般的なギターロックの特徴を持ちつつ、ヴォーカルのエモーショナルで伸びやかな歌声とジョン・フルシアンテ直系のギタープレイが程よく異彩を放つ。どんぐりの背比べ的な空気が漂いセルアウトと前衛さの区別さえ危うくなってるこのシーンにおいて特別群を抜くほどの実力があるかと言われると微妙ですが、個人的にはかなりツボにはまっているバンドです。特筆すべきはとにかくヴォーカルの歌声。なよなよした細い声かあるいはがなるだけの聞くに堪えない似たり寄ったりのシンガーが多い国産ロックの中でもかなり評価に値する素晴らしい歌唱だと思います。楽曲は第三者のアレンジが入ったことやゲームソフトとのタイアップがあったこともあり一般的な落とし所にある程度ハマらされている感もありますが、独特のダサかっこよさやセンスはキラリと光っています。
Circus Maximus "Nine"
ポストDream Theaterに最も近いとの評判高い、ノルウェー出身北欧プログレッシブメタルバンドの3rd。前作、前前作での順調な成長と、それなりに各先人バンドへのオマージュを見せつつも確固たるオリジナリティを感じさせたサウンドで若手注目株だった彼らだが、5年という長いスパンを置いてようやくリリースされた本作はやや毛色が異なっており、いわゆるプログレメタル然とした類型的なヘヴィネスはやや陰を潜め、代わりにメロハーばりの美しい歌メロが強調されたスタイルへと変貌している。練りこまれた楽曲は基本のバンドサウンドこそ変わらないが変拍子やテクニカルなソロバトルなどは減退し、聴かせるソロや冷たいキーボードアレンジなどが目立つ。本作リリース前のマイケル・エリクセン(Vo)のメロハープロジェクト参加、Kamelotのツアーサポートヴォーカルなどがいい影響になったのかどうかは不明だが、とにかく美しいメロディーラインが生きており、それでいて押し付けがましさはなく実に心地よく耳に入ってくる。あえて例えるならDream Theaterの出世作にしてプログレメタルの黎明作"Images And Words"の現代再解釈とも言うべきか。賛否両論激しい今作だが、個人的にはこの進化には絶賛を持って応えたい。アルバムを通して叙情性と透明感が美しい一作。素晴らしい。
Dir en grey "Uroboros -Remaster-"
国産ラウドロックバンドの2008年にリリースされた出世作を新たにリミックス/マスタリングしマテリアルを追加したアルバム。と書くとただのリマスタ版のように見えるが、実態は全くの別物といった印象だ。"Uroboros"はカオティックハードコア的な要素が実験的に取り入れらた意欲作でかなり音が詰まっておりミックスの段階で埋もれていたパートが多かったらしく、今回のリマスタによって驚くほどくっきりと各サウンドが聴き取れるようになり同時にその練り込み具合に驚嘆させられた。いくつかの曲には新たなパートも付け足され、さらにシングルのカップリングでありながら明らかに今作と世界観を同じにしていた"Hydra666"が追加収録されたりするなど大きな変化を遂げている。これはもはやリマスタというよりは完全版、あるいは再構築版だろう。新たな産声をあげた魔物アルバムだ。
Enslaved "Riitiir"
ノルウェー出身、ベテランプログレッシブブラックメタルバンドの12作目。以前から評判は耳にしていたもののなかなか聴く機会がなかったバンドだが、今回非常に出来がいいということで購入してみた。結論からいうと実に素晴らしいアルバムだと思う。まずブラックメタルらしいアグレッションや荒涼とした世界観を残しつつも70年代プログレを彷彿とさせるような展開及びサイケな要素もあり、クリーンボイスの神秘的な歌メロやキーボードアレンジが暴虐パートと美しく入り乱れながら展開していく様は圧巻。どの曲も8分前後あるが全く長さは感じさせることなく、いつしか世界観に飲まれている。評判通りの名作。
Europe "Bag of Bones"
かつて北欧メタルの代表格として一世を風靡したバンドによる9作目のフルアルバム。再結成以降はかつてのキラキラしたサウンドとは決別しハードな路線な彼らだが、今作はなかなかどうしてブルージーな渋いハードロック。それでも今風に聴きやすくブラッシュアップされてる点は流石ベテランといった風格で、昨今のヘヴィネス路線とうまく噛み合っている。ヴォーカルのセクシーな歌声とキーボードのやり過ぎ感が残っているのがいいアクセントになっているか。攻めの姿勢を失わないギターサウンドなども素晴らしい。
The Flower Kings "Banks of Eden"
スウェーデン出身シンフォニック・プログレッシブロックの雄による5年ぶり11作目の2枚組フルアルバム。原点回帰とアナウンスされていたその内容だが、とにかく美しいというのが第一印象だ。いきなり26分の大作で幕を開けると幻想的でメロディアスなTFK節炸裂のサウンドが次々と展開。叙情的なギターとソウルフルなヴォーカル、鮮やかなアレンジによるキーボード、力強くバンドを支えるリズム隊。どこを切っても魅力的なメロディーが次から次へと登場し、流れるように展開を導き、そして高らかに上昇するようにバンドアンサンブルが絡みあっていく。プログレッシブロックの側面の一つである複雑さや実験的な要素はほとんど登場しないものの、ただひたすらに美しく叙情的である。アルバムのラストを飾る"Rising the Imperial"でオープニング曲の"Numbers"で最初に提示されたメロディーからロイネの天に登るかのようなギターソロで鮮やかに展開、完璧な世界観を提示しきって幕を下ろすなどという"らしい"試みも健在。ボーナストラックである2枚目に収録された楽曲も本編に劣らないクオリティで、雰囲気こそ違うもののメロディアスでシンフォニックな味が色濃く出た良曲揃いだ。はっと驚かされるような高度さやプログレッシブさこそないものの、本作はとにかくメロディーと展開の美しさに重点がおかれている。従来のバンドの良さをしっかり残しながら、原点回帰といいつつも懐古になりすぎない絶妙なバランス感覚がすばらしいアルバムである。繰り返しになるがこのアルバムの世界観と美しさは、このバンドのキャリアのみならずシーンにおいて群を抜いた出来だと思う。文句なしの傑作。素晴らしい。
Galneryus "Angel Of Salvation"
国産パワーメタルバンド通算8枚目のフルアルバム。ヴォーカル交代以降かなりのペースでアルバムをリリースしライヴも精力的に行う彼らだが、全くクオリティが落ちないところがます素晴らしい。本作ではこれまでのテクニカルでネオクラな路線を受け継ぎつつ、一層メロディーに磨きがかかった印象で国内屈指のハイトーンヴォーカル小野正利のクリアな歌声が見事にマッチしている。妥協は一切無く、14分ある大作のタイトル曲でもクラシックのメロディーを巧みに引用するベタな手法ながら最後までダレずに盛り上げることができている。バンドとしての安定感と美学の追求を感じさせる佳作。
Hello Sleepwalkers"マジルヨルネムラナイワクセイ"
鳴り物入りでデビューした新世代ロックバンドによる1stミニ。トリプルギターに男女ツインヴォーカル、カオティックな曲展開にどこを切ってもキャッチーなメロディーと派手なバンド。なかなかどうしてテクニカルなフレーズも多く、若いながら可能性を感じさせるサウンドを出している。とはいえその曲作りには繊細さや美学はあまりなく、言ってしまえば若さ故の勢いと無茶な曲作りが思わぬ化学反応を起こしているなといった感じで、そこが魅力的でもあり危うくもある。明らかにプログレやハードコアといったジャンルを想像させる音像を持ちながら根底は歌謡ロックなんだなというところも面白い。"惑星Qのランドマーク"と"月面歩行"は名曲。今後に期待。
Isahn "Eremita"
ブラックメタル創世期に絶対的カリスマとして君臨したEMPERORのフロントマンにしてコンポーザー兼マルチプレイヤーIsahnによるソロアルバムの4作目。ヘヴィメタル、ブラックメタルという要素を基本にメロディアスな要素に加え知的なアレンジやジャジーな音さえも取り入れたプログレッシブなサウンドが特徴で、彼の孤高の音楽感と知的さが現れたアルバムといえる。多彩なゲスト陣のプレイも魅力で、Jeff Loomisの異様なテンションのギターソロなどが耳を引く。名作と評されている前作までの三部作に比べるといささか含みが増しており、全体として思索路線であるような感もある。
John Mayer "Born And Raised"
アメリカ出身、現代の三大ギタリストと評されるシンガーソングライター/ギタリストの5作目。ブルース直系の熱いプレイと高度なテクニックを持ちながらもあくまでもポップな曲作りに拘り売れっ子として有名な彼だが、今作は一転してカントリー調のサウンドを中心とした楽曲が並んでいる。これが良い方向に転がった。アコースティックギターの音色は優しく、歌声は伸び伸びとした喜びに満ち、自然体の彼がうまい具合にはまっていると言えるだろう。それでいてギタープレイも遺憾なく発揮されており、バックのアレンジも含め一点の妥協もない。本人すら前作の出来には納得行かなかったらしいが、その反動が今作だとしたら実にうまい昇華の仕方といえる。じっくり聴いても流して聴いても気持ちがいい、素晴らしいアルバム。
Kamelot "Silverthorn"
衝撃のヴォーカル脱退を経てリリースされた、アメリカ出身シンフォニックメタルバンドの10th。個性的かつ圧巻の歌唱でバンドを支え続けたロイ・カーンが電撃引退、サポートヴォーカルを入れてのツアーやオーディションによる新ヴォーカル選考など慌ただしい中しっかりと制作された本作。正直に言うと名実ともにバンドの顔であった前任者の脱退は致命的で、もはやかつてのエネルギーは戻ってこないだろうと思っていたが、アルバムを再生して数分後には杞憂に終わった。絶対的な個性であったロイの歌声こそ消えたものの他は紛れも無くKamelotのサウンドのまま。新ヴォーカルはSeventh WonderというプログレメタルバンドのTommy Karevikで、ところどころ前任者を意識した歌唱をしつつも伸びやかな発声をいかした素晴らしい歌唱を見せている。全体として近年のKamelotにあった重く複雑な雰囲気は消え、4th,5thの頃のシンプルなパワーメタル路線とこれまで培ってきたダークなエピック路線がうまく噛み合った印象。どの曲もシンプルに良いメロディーや展開を聴かせてくれる。傑作とまではいかないが欠点もなく、バンドにあった危機を考えれば十二分に良い出来だろう。
The Killers "Battle Born"
アメリカはラスベガス出身、次世代ニューウェーブロックで世界の頂点を狙うバンドの4th。キーボードやシンセサイザーを大胆に多用したバンドサウンドに力強いヴォーカルを武器にいまや世界的バンドとなった彼らだが、4年のスパンを置いてリリースされた本作ではこれまでの路線を踏襲した集大成的な作品になっている。派手でキャッチーなサウンドは変わりはなく、落ち着いたテンポで効果的に盛り上げる曲が並ぶが、やや抜きん出てるものに欠ける感はある。しかしアレンジは細部まで練りこまれており、洗練されたサウンドでしっかりとスタイルを突き通そうとしていくところは評価できる。
Kotipelto & Limatainen "Blackoustic"
Stratovariusのフロントマンにして北欧を代表するヴォーカリストであるティモ・コティペルトと、元Sonata Arcticaのギタリストであるヤニ・リマタイネンのアコースティックカバープロジェクトによるアルバム。Cain's Offeringというプロジェクトでも知られる二人の新しいアルバムがまさかのリリース、本作はStratovariusu及びSonata Arcticをはじめとした様々なロック界の名曲のアコースティックカバーが中心となっている。バンドサウンドは廃されアコースティックギターと歌のみというシンプルな構成のため、ティモ・コティペルトの持つ独特の歌声が非常に心地よく聴こえる。有名バンドのメンバーによるアコースティックアレンジ、というよりは音楽好きな2人が酒場の片隅でわいわい思うがままに弾き語っているような、そんなリラックスした雰囲気と音楽に対する愛が感じられる良いアルバムだ。
Led Zeppelin "Celebration Day"
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冗談はさておき
伝説にして孤高のNo.1ロックバンドLed Zeppelinが一夜限りの復活を果たした2007年のライヴを収めたライヴアルバム。世界中からファンが集まり、ありとあらゆるメディアから注目され、絶賛と熱狂を持って幕を閉じた伝説のライヴが見事な音質で収められている。声の変化に合わせいくつかの曲のキーを下げながらも唯一無二の素晴らしい歌声を披露し、時たま全盛期のようなハイトーンさえ見せるロバート・プラント。近年は精彩を欠くプレイが目立っていたが濃密なリハーサルのお陰か驚くほどキレのあるプレイを見せるジミー・ペイジ。年齢を感じさせない現役のベースサウンドやキーボードなどで会場を熱狂させるジョン・ポール・ジョーンズ。父親を彷彿とさせるパワフルなプレイでバンドサウンドをしっかりと纏めあげていくジェイソン・ボーナム。どれをとっても"往年のロックバンドの再結成"という情けなさはなく、今にも翌日から世界ツアーをはじめるかのような緊張感とアグレッションを持った素晴らしい演奏が聴ける。もちろんZEPの特徴であるライヴアレンジやジャムセッションもあり、2時間という時間を使い切った圧巻のライヴだ。妥協なし、まさしく伝説の再来。本物のロックが濃縮された大傑作ライヴアルバムだ。
Paradise Lost "Tragic Idol"
イギリス産ゴシックメタルバンドの13th。前作までのメランコリックで暗黒性のある世界観はやや減退し、バンドの特徴でもある分厚いリフと耳に残るメロディーは変わらずかつてのスタイルであったロックらしいダイナミズムが戻ってきた印象。Nick Holmesの哀愁ただよう歌唱も相変わらず素晴らしく、ギターの独特の泣きも実に良い。濃密に構築されていた前作に対し、無骨ながらアグレッション重視のスタイルに戻った感じかもしれない。ゴシックメタルというジャンルの代表的バンドとして長い間君臨するベテランバンドらしく、本作も安定したクオリティーだ。
Rival Sons "Head Down"
アメリカ出身、"あの年代"を彷彿とさせるピュアなハードロックを聴かせるバンドの3rd。レーベルを変えて世界デビュー作となった前作に続く今作の内容はというと、コマーシャルの成功もあってそれなりに売れたせいか、あるいはあまりにも過去の著名バンドとの類似点を指摘されすぎて疲れたのか、全体的に小奇麗にまとまってしまったという印象。メロディーやリフはそこそこ耳に残るが相変わらず"これは"という曲はなく、洗練されたと言えば聞こえはいいがロックには必要不可欠な熱もやや減ってしまっている。しかしそれでも実力のあるメンバーなので演奏に一定以上のパワーはあるし、間奏やアレンジもなかなか凝っていて聴いていて飽きることはない。また、やや大人しくなったとはいえサウンドそのものに陰りはなく、前作までのファンをがっかりさせるような出来ではないだろう。リードトラックの" Keep on Swinging"や"Wild Animal"はキャッチーで悪くないし、" You Want To"の構成の緊張感とドラマティックなギターソロなんかは聴きどころだ。"Jordan""True"といった落ち着いたテンポの曲もよくできている。ただコンパクトな曲が並ぶ中に2パートに分かれた大作の"Manifest Destiny"はやや浮いてるように感じるし、アルバム後半に勢いがないのも確かである。過剰なメディア露出のせいでやや迷走気味ではあるが、確固たる核を失ってはいないことが評価できる一枚。
Rush "Clockwork Angels"
カナダ出身大御所スリーピースプログレッシブロックバンドによる原点回帰の20thコンセプトアルバム。かつてはSFに影響を受けた壮大な世界観によるコンセプトアルバムで知られた彼らだが、今作では大作志向といった感じはうけず、重厚なギターのリフワークと目立ちまくるベースとテクニカルなドラムによる定番のRushサウンドとなっている。どちらかと言えばより王道なハードロックに回帰した印象さえあり、スチームパンクな世界観を巧みに表現するサウンドと、シンプルなかっこよさと練りこまれたアレンジのどちらも楽しめる曲作りは孤高の高みに達している。勿論コンセプトアルバムをやめて以降の耳に馴染みやすいキャッチーさもしっかりと継承されており、プログレ愛好家のみならず広義のロッカーにもリスペクトを受けること間違いないだろう。コンセプトアルバムながら最後まで熱も落ちることなく、再結成後のカタログでは最高傑作ではないだろうか。文句なしの傑作。素晴らしい!
Soen "Cognitive"
スウェーデンから新たに結成されたプログレメタルバンドの1st。ドラムが元OpethのMartin Lopez、ベースが元Testament, DeathのSteve DiGiorgioでプロデューサーがToolと同じ人物というこのバンド、肝心の音楽性もToolとOpethを足して割った感じがある。トライバルなドラムと縦横無尽に空間を埋めるベース、静と動のコントラストは完全にTool。ヴォーカルはデスヴォイスやシャウトは使わず浮遊感のあるメロディーを色気たっぷりに歌い上げるOpethタイプ。と、メンバーの経歴と非常に両者に似た音楽性ではあるが、ただのコピーに終わらない明確な方向性と何か面白いものを作ってくれそうな可能性を感じる。例えば静と動の静のパートでは幽幻さと同時にある種北欧的な叙情があるし、動のパートでは意外にもキャッチーでアグレッシブな音を出している。空虚なクリーンパートを活かすプロダクションも実に聴き応えがあり、総じて高い音楽性をもった面白いバンドだと感じた。
Steven Wilson "Get All You Deserve"
Porcupine Treeなどで知られる現代英国プログレを代表する名コンポーザー、スティーヴン・ウィルソンによるソロプロジェクトのライヴを収めたアルバム。Marco MinnemannやNick Beggsをはじめとする豪華メンバーによる驚異的な安定感と、ライヴらしい熱さを秘めた演奏がまず素晴らしい。スタジオアルバムでは練りこまれた世界観で魅せてきた楽曲が、ライヴでは完璧な再現と同時に生演奏らしい緊張感でロックとしてのダイナミズムを主張しはじめるのもさすがというところ。新曲の"Luminol"もプログレらしい展開をもったライヴ映えする曲で見事にハマっている。しかしスティーブン・ウィルソンの底知れぬ才能と尽きぬアイデアに圧倒されるアルバムだ。
Storm Corrosion "Storm Corrosion"
Opethのミカエル・オーカーフェルトとPorcupine Treeのスティーヴン・ウィルソンという現代で最もプログレッシブな感性を持っている二大コンポーザーによるプロジェクト、という時点で嫌な予感しかしない本作。幽幻に、暗黒に、華麗に、知的に、叙情的に、とにかく内省的にブレーキをかけずにどんどん突き進む凄まじい音像が広がっている。どちらかと言えばスティーヴンの色が強く、彼のソロアルバムに似ている印象。はっきり言ってメタルのような激しさは皆無で、アコースティックギターやストリングスといった楽器がひたすらに層を成して流動している。彼らの敬愛する70年代プログレを彷彿とさせる音世界に、聴いているだけで飲み込まれる面白い一作。
Tedeschi Trucks Band "Everybody's Talkin'"
現代の三大ギタリストと評されるデレク・トラックスと、その妻でありこちらも卓越したブルースギタリスト/シンガーのスーザン・テデスキによるバンドプロジェクトのライヴアルバム。いくつかの公演から特に素晴らしいテイクを厳選して収録しただけあり、リラックスした雰囲気から驚異的なアンサンブルとジャムプレイ、そして熱狂的な演奏を楽しむことができる。カバー曲とオリジナル曲のバランスもよく、音質も良好で当日の会場の盛り上がりが伝わってくる。これぞライヴアルバム、と言える納得の出来。そして何よりもスーザンのヴォーカルや他メンバーを引き立てつつ時折炸裂するデレク・トラックスのスライドギターのトーンの美しさが際立っている。
TK from 凛として時雨"flowering"
国産カオティックハードコアバンド「凛として時雨」のコンポーザーTKによるソロプロジェクトのフルアルバム。繊細な世界観と叫ぶような男女ヴォーカルによるカオティックな音像で有名な彼だが、このソロプロジェクトではさらにその方向性を推し進めながらもより一層プログレッシブな感性を爆発させている。エフェクターを多用し縦横無尽に切り込むギター、テクニカルにそれを支えるベースとドラム。ストリングスとピアノをアクセントにウィスパーボイスやファルセットを多用し時に泣き叫ぶようにシャウトするヴォーカル。どれをとっても個性的で、このうえなく魅力的だ。ポストロックやカオティックハードコア、プログレッシブロックと言った地平の延長線上に佇む独特の世界観が見事。
Van Halen "A Different Kind of Truth"
伝説のアメリカンハードロックバンド、オリジナルヴォーカルが復帰し14年ぶりのフルアルバム。28年の時を経てデイブ・リー・ロスが復帰、ベーシストはエディ・ヴァン・ヘイレンの息子とリリース前から話題性十分の本作。先行カットされたシングルが落ち着いたミドルテンポの"Tatto"だったために歳相応に落ち着いてしまったのかと思えば、蓋をあけると飛び出してくるのはセンス抜群の煌めくようなギタープレイ、ノリノリのリズム隊と存在感抜群のヴォーカル、まさにどこをどうきってもVan Halenの素晴らしいハードロックだ。現代の音質で説得力抜群のサウンドには"再結成""往年の名バンド"という感じはなく、現代の若いミュージックシーンに真っ向からぶつかっていく王道そのもの。抜きん出てた名曲こそないもののこの熱量には脱帽するしかない。さすがです。
あさき"神曲 -Remaster-"
国内ゲームミュージシャンによる和風プログレメタルアルバムのリマスター盤。音楽ゲーム界を中心に活動しているためロック愛好家の間では認知度がいまいち低いが、超本格派のマルチプレイヤーにして優れた感性を持つ彼がかつてリリースした伝説のアルバム"神曲"。これを本人の手でリマスタしさらに再レコーディングされたのが本作で、前述のDir en greyのように完全に別物に生まれ変わっている。埋もれがちだったパートが聴き取りやすくなっただけでなく書き下ろしの部分もあってか、もはや曲の雰囲気すら変わって聴こえるほどに世界観の深みが増している印象だ。このようなアルバムが同じ年にリリースされたというのは非常に面白い偶然だろう。ゲームミュージシャンだからといって敬遠せずに、ぜひ多くの人に聴いてもらいたい大傑作アルバム。
摩天楼オペラ "Justice"
国産ヴィジュアル系シンフォニックメタルバンドによる2ndフルアルバム。V系出身ながらメンバー全員がメタルの影響を公言し、本場のパワーメタルに現代的なインダストリアル要素を加えつつ日本人らしい歌謡テイストを加えたといった感じの音楽性を持ち、Janne Da ArcやSiam Shadeといったポップロックバンドの系譜にもある非常に面白いバンドだ。メジャーデビューを契機にこれまで以上にメタルに接近したサウンドになってきた彼らだが、本作もやや方向性の散漫さが見受けられつつもどの曲にもキャッチーなメロディーとメタリックなバンドサウンドが配され、それなりに練りこまれたアレンジにも好感が持てる。欠点はリズム隊とギターの卓越した実力とヴォーカルのよく伸びるハイトーンを基調とした個性ある歌声に対して大げさなだけのキーボードが浮いていることと、様々なジャンルを受け入れ解釈できる実力がかえって器用貧乏になりいまいち確固たる音楽性が見えてこないことだろうか。しかし本作リリース以降は思い切って彼らが最も好きだというパワーメタルに舵をとっており、バンドとしての説得力がかなり増してきている印象がある。何にせよ個人的にはこのような日本人らしい感性のヴィジュアル系バンドは嫌いでないので、今後も応援していきたい。
がっかりアルバム
Amazarashi "ラブソング"
青森出身のシンガーソングライターによるロックバンドの2ndフルアルバム。感傷的でフックある歌詞と心くすぐる絶妙なアレンジセンスでコアなファンを続々と生み出しつつある彼らだが、メジャーデビュー前後で大きく変化してしまった。それは例えばパーソナリティが今までになく顔を出し始めた歌詞であったり、あるいはこれまで意図的に排除してきた曲調の採用であったり。これを好意的に捉えるかどうかだが、個人的にはどうしても受け入れることができなかった。キャッチーにはなったし青臭さみたいのもある程度変容したので、広い層に受け入れられるとは思う。
Muse "The 2nd Law"
イギリス出身、ロンドンオリンピックのテーマソングを担当するなど世界的人気を集めるスリーピースロックバンドの6th。彼らの2年ぶりの新譜となる今作だが、良くも悪くも期待を裏切り常に実験的な作品をリリースし続けてきた彼らの「逃げ」が初めて見えてしまっていると感じた。数々の大御所バンドとのライヴ/フェスを成功させ名誉と盤石の地位を手に入れてしまった反動か、あるいはもう若くないと感じてのことか。本作に収められた楽曲はいままで通り個性的な部分をしっかり持ちつつも、どこか過去のアレンジの焼き直しや使い回しが見られる。ベーシストのクリスがメインヴォーカルをとった"Save Me""Liquid State"は悪くないが本編にいれるのは違和感があるし、アルバムタイトルにもしている実験的な"The 2nd Law"と冠した2曲がインストとしてアルバムの最後に申し訳程度に配置されてるのも「保険」であるように見えていささか苦言を呈したくなる。もちろん評価できる面もある。例えばマシュー・ベラミーの歌唱はここにきてさらに上手くなっているし、いくつかの楽曲はこれまでの作品の延長線上ながら評価できる広がりを見せている。それにやや"過剰"さが鼻についた前作と比べればファンの求める音楽に今までになくしっかり接近してきているとも言えなくない。ただ、前述のとおり好意的に受け取れない要素があまりにも多く、素直に評価できないというのが正直なところである。成功しすぎたが故のジレンマなのかもしれないが、そこで歩みを止めて冒険しないそこそこの出来の曲を作り続ける延命の道を選んでしまったのならこれほど残念なことはないだろう。このまま「有名バンド」として延命しながら小遣い稼ぎのツアーを続ける道に入るのか、それとも再び野心的で革新的なパフォーマンスを見せてくれるのか。来年よりはじまる大規模なツアーにおける、Museの復活を切に願う。
Sonata Arctica "Stones Grow Her Name"
なにこれカラスよけの円盤?